« トマトクリームパスタ | メイン | ゆらゆらと »

恍惚の人

40年程前、文学集と百科事典が並んでいた昭和な実家の本棚の中に、
「恍惚の人」はありました。
当時話題になった本、流行語大賞なんてなかったけれど、
私のような小学生からみんなが知っている大ベストセラーでした。

いつか読んでおかなくてはと思っていたけれど、
当時の介護の現実を受け止める覚悟がなかったのかもしれません。
今回、読んでみて強い衝撃を受けました。
全然古くない。それが一番の衝撃でした。

koukotu.jpg昭和47年の小説、42年という月日が流れたけれど、
あの当時に超高齢者社会が来ると予想し、老人介護を社会問題として提言したことは、
介護の歴史に大きな影響を与えたものだったはずです。
この本が書かれた当時の日本女性の平均寿命が74歳、男性が69歳と文中に出てきます。
現在は女性が86歳、男性が80歳です。
介護する子の世代もそれだけ高齢化しています。

まだまだ経済成長を追い求めていた時代、2世帯同居はしているけれど別棟で、
夫婦共稼ぎ、一人息子という当時の働き盛り夫婦を象徴する家庭が突然直面するおじいちゃんの介護。
手探りの介護の中でかわされる
「平均寿命が延びた裏側の悲劇」
「人口老齢化の実態」
という未来への問題提起とも思われる会話。
医学の進歩、介護保険制度や、施設の充実、認知症や介護への知識も、
42年の間に深まったとは思いますが、
自分と関係のないとは、とても言えなくなった超高齢者社会の中で、
時代を超えて伝わるメッセージがたくさんありました。

なかでも心をうったのは、
人格が壊れてしまった人への恐怖と絶望の感情から、
おじいちゃんのありようそのままを受け入れよう決意する心の変化を、
夜に咲く花をみつめるシーンで美しく描かれている場面でした。
想像していた凄惨さより、読み終えて残った感情は不思議と爽やかなものでした。

昭和47年というと、私の祖父が倒れて2年後に亡くなった翌年だったのだなと、
本棚にあった理由を考えました。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.redolog.net/mt/mt-tb.cgi/5416

コメントを投稿

About

2014年9月19日 22:07に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「トマトクリームパスタ」です。

次の投稿は「ゆらゆらと」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。