職場の関係の方から招待券をいただいて、
最終日にこちらの展示会に伺いました。
日本刺繍の素晴らしく華やかな作品の数々、
まさにひと針ひと針、
細い針と糸だけで、絵にも書けないような美しい作品を生み出す情熱は、
どこから生まれるのだろうと、ため息とともに見ていました。
全てに神経が行き届き、いまにも動き出すかのような花鳥風月。
運よく草野さんご自身のお話をお聞きすることができました。
日頃からとても心配や悩みが多いそうで、
「いつもと違う鳥の鳴き声が聞こえれば、怪我でもしているのではと心配になり、
枯れかかった花を見れば、どうにかしてまた元気にならないものかしらと悩み、
ただそういった思いを作品に込めて、
作品の中では鳥は元気に羽ばたき、花は息を吹き返す。
うまくいかなければ悩むけれど、悩むから工夫するのです。」
そうおっしゃっていたお話が印象に残り、
祈りを込めていらっしゃるという事なんだなあと思いました。
今は亡き佐藤初女さんが「暮らしは祈りです」とおっしゃっていました。
その言葉を初めて聞いた頃よりも、
「日々の生活の中に祈りがある」という意味が、
ようやく少しわかるようになってきたように思います。
まだまだうまく言葉では表現できません。
最近読んだ小川洋子さんと河合隼雄さんの対談の本の中からも、
物語が持つ意味合いを語られる部分があって、
その文章から感じた言葉も祈りでありました。
小説を書く、刺繍の作品を作り上げる、ご飯を炊く、洗濯物をたたむ、
空を見上げる、草木に水をあげる、おむすびをむすぶ、
できることは違っていても、
おそらく全てに物語、祈りがあるのかもしれないと感じています。
生活の中にある些細な悩みも工夫して、
昨日と何かが違う自分ができればいいなあと思います。