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2007年11月04日
鬼平・剣客・梅安のなかの蕎麦屋(その2)
池波正太郎の小説で江戸時代を舞台にした代表作・鬼平犯科帳、剣客商売、梅安にはそれぞれに味わいがあり、根強いファン(愛読者)がいる。
池波小説の熱い愛読者に「3つの作品の中で一番好きな小説を選ぶと?」と問うと、『剣客』と応える人が結構多いようである。また池波小説は男性ファンが多いイメージがあるが、女性ファンも意外にいらっしゃり、彼女達の多くも『剣客』が一番好きと言う方が多い。
『鬼平』はご存知のように実在者をモデルにできた小説であるが、剣客、梅安は架空の物語である。剣客商売の主人公・秋山小兵衛は60歳近くになり娘のような年齢の若い後妻をもらい、小柄で痩身の身体からは想像できない剣の強さをもつある意味スーパーヒーローであり中高年の憧れでもある。基本的に秋山一家のホームドラマと言えなくもないが、秋山小兵衛以外にも息子の秋山大治郎、その妻となる佐々木三冬、小兵衛が手をつけ後妻となる大治郎より年下で農家出身の“おはる”など、魅力的な登場人物が登場しファンを惹きつける。
また3作品の中でも「食」にまつわるシーンが一番多く描かれていて、読んでいると思わずよだれが出そうになる。もちろん蕎麦屋も登場するが、家庭での食事シーンも多く、晩ご飯や酒のつまみの参考にもなる。「食」以外にも大川(墨田川)、深川の江戸の情景があちこちに散りばめられていて、楽しいことこのうえない。
もし、これから池波小説にチャレンジしようという方がいるのであれば、まずは『剣客商売』から始めることをお勧めする。この一作で池波ファンになることは間違いないと思う。
剣客商売(けんかくしょうばい)
店名 住所(明記されていないものは推定、現住所は古地図から推定した) 作品名
1.『亀玉庵』 浅草・奥山(台東区浅草2丁目) 老虎(2巻)、たのまれ男(5巻)、
………秋山大治郎が父の小兵衛に二度ほど連れてこられ、広い江戸で唯一行き付けの蕎麦屋。店の奥には席料を取られるが静かな座敷があり、浅草田圃を眺めながら酒食を楽しむことができる。池波作品ではお馴染みの店。
2.『翁蕎麦』 深川・熊井町(江東区永代1丁目)深川十万坪(3巻)、女と男(8巻)、剣の師弟(11巻)
………小兵衛が20年来の行きつけの店。見張りに使ったりもする。翁庵と記されることもあるが、3.の店とは別。
3.『翁庵』 上野山下(台東区上野6丁目) 赤い富士(3巻)
………悪人が打ち合わせに使う蕎麦屋。
4.『十一屋(千鳥そば)』 日本橋・久松町(中央区日本橋久松町) 陽炎の男(3巻)
………店名は十一屋。浜町堀の千鳥橋から「千鳥そば」を名乗る。小体ではあるが凝った造りの店。蕎麦も酒も他の店より高い。
5.『翁屋』 日本橋へっつい河岸の道(中央区日本橋人形町2丁目) 陽炎の男(3巻)
6.『寿庵』 浅草・元鳥越町(台東区鳥越2丁目) 嘘の皮(3巻)
………名前のみ登場。悪人が打合せに使う。
7.『上州屋吉兵衛』 芝・神明町(港区芝大門1丁目) 白い鬼(5巻)
………黒い太打ちの蕎麦を、薬味を使わず生姜の搾り汁をたらしこんだ汁で食べる上州風の蕎麦を出す店。汁の中には少し味噌が混ぜられているらしい。蕎麦は、朱塗りの箱の蓋のような容物へ、冷たくしてこんもりと盛られている。この店の商売は頑固そのもので、寒中でも冷たい蕎麦と冷酒しか出さない。
8.『白藤蕎麦』 湯島横町(千代田区外神田2丁目) 暗殺(5巻)
………悪人が打ち合わせに使う蕎麦屋。
9.『東玉庵』 神田・三河町二丁目(千代田区内神田1丁目) 品川お匙屋敷(6巻)
………しゃれた構えの蕎麦屋で、「磯浪そば」が名代。粗粉を除いた蕎麦粉を細く上品に打ったものへ、もみ海苔をかけた現在の「ざる蕎麦」。当時はまだ珍しかったという。
10.『松桂庵』 上野・不忍池ほとり(台東区池之端1丁目) いのちの畳針(6巻)
………御用聞きが考え事をする。
11.『浦島蕎麦』 浅草・茅町二丁目(台東区柳島2丁目) 毒婦(8巻)
………小ぎれいな蕎麦屋。太い打ちの蕎麦がうまいと評判。小兵衛が立ち寄る。
12.『末広蕎麦(岩田屋銀兵衛)』 浅草・茅町二丁目手前(台東区柳島2丁目) 仁三郎の顔(8巻)、秘密(9巻)
………しゃれた造りの小座敷が2階にあり、酒も美味く、蕎麦のほかにも、気のきいたものを出してくれる。
13.『蕎麦屋 亀屋平兵衛』 上野・新黒門町(台東区上野1丁目) 女と男(8巻)
………秋山小兵衛がかつての弟子を連れて行く。
14.『清月庵』 深川・常盤町(墨田区常盤2丁目) 待ち伏せ(9巻)
………小体な店だが清げなかまえで、2階に小座敷がある。秋山大治郎が打合せに使う。
15.『新花』 市ヶ谷八幡下(新宿区市谷八幡町) 或る日の小兵衛(9巻)
………小腹の空いた秋山小兵衛が立ち寄る蕎麦屋。
16.『杵屋』 根津権現門前町遊所内(文京区根津1丁目) 老の鶯(10巻)
………密偵が見張りに使う蕎麦屋。
17.『山田屋』 南伝馬町三丁目(中央区京橋2丁目) 老の鶯(10巻)
………御用聞きが相談場所に使う蕎麦屋。
18.『丸屋』 塩町三丁目(新宿区四谷3丁目) 初孫命名(11巻)
………悪人が打ち合わせに使う蕎麦屋。
19.『小玉庵』 浅草・諏訪町(台東区駒形1丁目) 時雨蕎麦(11巻)
………秋山小兵衛が雨宿りに飛び込んだ蕎麦屋。
20.『笹岡屋』 四の橋(港区南麻布3丁目) 同門の酒(12巻)
………秋山小兵衛と四谷の弥七が打ち合わせに使う。
21.『月むら』 浅草・聖天町(台東区浅草7丁目) 逃げる人(12巻)
………開店して間もない小ぎれいな蕎麦屋。奥には大川を望む座敷がある。秋山大治郎が父・秋山小兵衛を真似て、酒を頼み蕎麦掻きやあられ蕎麦を食べる場面がでてくる。
22.『川品屋』 日本橋・伊勢町(中央区日本橋本町3丁目) 罪ほろぼし(12巻)
………見張り中に御用聞き・四谷の弥七が秋山小兵衛を誘う。
23.『信濃屋』 北品川二丁目西(品川区北品川区2丁目) 波紋(13巻)
………東海道・品川宿に面した蕎麦屋。
24.『春月庵』 赤坂・田町(港区赤坂3丁目) 剣士変貌(13巻)
………秋山小兵衛が旧知を誘う御膳蕎麦の店。
25.『万屋』 深川・亀久橋北詰(江東区平野2丁目) 剣士変貌(13巻)、深川十万坪(16巻)、首(16巻、
………小体な店で品数も少ないが、主人が打つ蕎麦は旨い。秋山小兵衛も気に入りの店。おはるは蕎麦の上に卵の黄身を落とし、さっと混ぜ合せ汁につけて上手に食べる。
26.『篠塚稲荷鳥居傍の蕎麦屋』 浅草・平右衛門町(台東区柳橋1丁目) 夕紅大川橋(13巻)
………秋山小兵衛が見張りに使う。
27.『明月庵』 麻布・材木町(港区六本木6丁目) 風花の朝(14巻)、忍び返しの高い塀(14巻) ………乗泉寺前の蕎麦屋。寒くなると「柚子切りの蒸し蕎麦」を出す。秋山小兵衛や四谷の弥七も大好物。
28.『舛屋』 麹町九丁目(千代田区六番町) 二十番斬り(15巻)
………秋山小兵衛が四谷に道場を構えていた頃からのなじみの蕎麦屋。
29.『瓢箪屋』 本郷五丁目(文京区本郷5丁目) 暗夜襲撃(16巻)、首(16巻)
………本店は麹町四丁目。貝柱を浮かせた「あられ蕎麦」が名物。
30.『蕎麦屋 原治(はらじ)』 両国橋東詰(墨田区両国1丁目) 浪人・伊丹又十郎(16巻)、ないしょないしょ(剣客商売番外編)
………江戸では有名な蕎麦屋。元禄から続く古い店。紫蘇切りや、柚子切りも出す。
31.『万屋』 深川・亀久橋北詰(江東区平野2丁目) 深川十万坪(16巻)、首(16巻)
………小体な店で品数も少ないが、主人が打つ蕎麦は旨い。秋山小兵衛も気に入りの店。
32.『小玉屋』 坂本四丁目(台東区下谷3丁目) 黒白(剣客商売番外編)
………熱い柚子切り蕎麦を出す。
33.『花駒屋』 本所・柳原町一丁目(墨田区江東1丁目) ないしょないしょ(剣客商売番外編)
………開店間もない小ぎれいな蕎麦屋。10日に一度程碁会所としても使われる。「つけとろそば」が美味い。
34.『湊屋』 上野山下・五条天神前(台東区上野4丁目) ないしょないしょ(剣客商売番外編)
………良い酒を飲ませると評判の蕎麦屋。悪人が入って行く。
(つづく)
~次回は「仕掛人・梅安」の蕎麦屋を掲載~
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コメント
剣客商売テレビでシリーズが始まると
毎回見ています。でもテレビでは
蕎麦屋はいつも同じような気がします。
今度気をつけてみてみます。
ソバリエ 前島より
投稿者 Sobalier Maejima : 2007年11月08日 23:49
